
肝斑は、一般的なシミとは異なり、摩擦や刺激、ホルモンバランスの影響など様々な要因が複雑に絡み合って生じる 難治性の色素斑 です。
特に強い刺激を与えると悪化するリスクがあるため、レーザー治療においては、 刺激を極力抑えた施術の選択 が極めて重要になります。
肝斑に有効なレーザー治療:「トーニング」のメカニズム
肝斑は、熱や強い刺激で悪化しやすい特性を持つため、 高出力のレーザーによる集中的な治療は禁忌 とされています。
「トーニング」は、従来のシミ治療と異なり、 低出力のエネルギーを広範囲に均一かつ穏やかに照射 することで、メラニンを刺激せず、少しずつ分解していく特殊な照射技術です。
これにより、 肝斑を悪化させるリスクを最小限に抑えながら 、安全に色素を薄くしていくことが可能になります。
肝斑治療に最も有効とされるのが、以下の「 レーザートーニング 」や「 ピコトーニング 」と呼ばれる手法です。
「レーザートーニング」
低出力のレーザーを広範囲に均一に照射することで、メラニン色素を少しずつ分解していく治療法です。
肝斑のメラニンを過剰に刺激することなく、炎症を起こさせないように穏やかに作用させます。
「ピコトーニング(推奨)」
レーザートーニングよりもさらに短いピコ秒(1兆分の1秒)という極短時間でレーザーを照射します。
| 特徴 | レーザー トーニング |
ピコトーニング |
|---|---|---|
| 照射時間 | ナノ秒 (10億分の1秒) |
ピコ秒 (1兆分の1秒) |
| 肌への刺激 | 少ない | 極めて少ない |
| 安全性 | 高い | より安心 |
| 効果 | 穏やか | 穏やかで、 より回数が少なく 済む場合も |
ピコトーニングは、従来のレーザーよりも熱による刺激が少なく、 衝撃波でメラニンを粉砕 するため、肝斑を悪化させるリスクがさらに低く、 より安全で安心な治療法 として推奨されます。
肝斑治療で避けるべき施術と注意点
刺激に弱い肝斑を治療するにあたり、以下の施術は避けるか、非常に慎重な判断が必要です。
「フォトフェイシャル(IPL)」は原則NG
フォトフェイシャル(IPL:光治療)は、広範囲な波長の光を一度に照射するため、光エネルギーが熱に変換されやすく、肝斑を悪化させる( 炎症後色素沈着を引き起こす )リスクが高いとされています。
肝斑が混在している場合は、原則として避けるべき施術です。
「スポット照射」は慎重に
一般的なシミに対する 高出力のスポット照射 は、肝斑を悪化させる 最大の要因 の一つです。
たとえ肝斑と通常のシミが混在していても、高出力レーザーを肝斑部位に当てると炎症を引き起こし、かえって色素が濃くなるリスク( 再発・悪化 )があるため、非常に慎重な判断が必要です。
まとめ
肝斑のレーザー治療は、「 刺激を避ける 」ことが成功の鍵です。
| ポイント | 具体的な行動 |
|---|---|
| 有効な 治療 |
低刺激な レーザートーニング または ピコトーニング を選ぶ。 |
| 推奨 | 熱ダメージの少ない ピコトーニング が最も安心。 |
| 避けるべき施術 | 熱刺激が強い フォトフェイシャル (IPL)は避ける。 |
| 最大の注意点 | 高出力の スポット照射 は 絶対に慎重に行う (悪化リスク大)。 |
レーザートーニング(特にピコトーニング)による治療は、肝斑を薄くするための最も安全で効果的な手段ですが、肝斑の再発を防ぎ、安定した改善を維持するためには、複合的なケアが不可欠です。
施術と並行して、摩擦を避けるスキンケア、内服薬(トラネキサム酸など)の服用、そして何よりも徹底した紫外線対策を継続することが、治療の成功と美しい肌の維持につながります。
Q&A
Q1. ピコトーニングで肝斑は完全に消えますか?
A. 肝斑はホルモンバランスや摩擦などの影響も受けるため、完全に消し去るのは難しいとされていますが、ピコトーニングを繰り返し受けることで、 目立たないレベルまで改善 することは可能です。
治療と並行して、内服薬や厳重な紫外線対策を続けることが重要です。
Q2. 肝斑がある部分に通常のシミのスポット照射はできますか?
A. 非常にリスクが高い ため、原則として推奨されません。
肝斑が混在している場合、高出力のレーザーがわずかにでも肝斑に当たると、刺激で全体が悪化する可能性があります。
まずは肝斑の治療を優先し、目立つシミも トーニングで薄くしていく アプローチが最も安全です。
Q3. ピコトーニングはどのくらいの頻度で受けるべきですか?
A. 肌への負担が少ないため、一般的に 1~2週間に1回 のペースで繰り返し受けていただくことで効果が高まります。