「肝斑(かんぱん)」は、通常のシミ(老人性色素斑)とは異なり、治療が難しいシミです。
そんな肝斑治療薬として高い認知度を誇るのが、内服薬の「トランシーノ」シリーズです。
ここでは、トランシーノの主成分「トラネキサム酸」の作用メカニズムと、
市販薬とクリニック処方薬の配合量の違いについて、分かりやすく解説します。

1. トランシーノが肝斑に効く仕組み(トラネキサム酸の作用)
トランシーノEXやトランシーノIIといった肝斑向けの製品の主成分は、
「 トラネキサム酸 」です。
この成分は、肝斑の原因となるメラニンの生成を、初期の段階でブロックします。
肝斑とトラネキサム酸の関係
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 肝斑の原因 | 紫外線や 女性ホルモン 、 物理的な刺激 などにより、 皮膚の炎症が活性化する。 |
| メラノサイト 活性化因子 |
炎症シグナルにより 「 プラスミン 」という酵素が産生され、 メラニンを作る細胞(メラノサイト)を 活性化する。 |
| トラネキサム酸 の働き |
プラスミンの働きを阻害(ブロック)する。 メラノサイトへの情報伝達を 初期段階で断ち切り、 メラニン生成を抑制 する。 |
これにより、トラネキサム酸は、肝斑のもととなる過剰なメラニンの発生を根本的に抑えることが可能です。
2. 肝斑治療における「トラネキサム酸の量」の注意点
トラネキサム酸の効果を最大限に引き出すためには、 1日あたりの服用量 が重要になります。
市販薬とクリニック処方薬では、この配合量が大きく異なります。
| 比較項目 | 市販薬 (トランシーノII/EXなど) |
クリニック・病院処方薬 (トラネキサム酸) |
|---|---|---|
| 1日あたり の配合量 |
最大 750mg | 750mg ~ 1,500mg |
| 服用期間 の目安 |
8週間継続服用後、 休止を推奨 |
3ヶ月~6ヶ月の継続服用 が一般的(医師判断) |
| 特徴 | 8週間で肝斑を改善する OTC医薬品として 唯一の承認(※) を受けている。 比較的軽度の肝斑向け。 |
重度な肝斑や、 より早い効果を求める場合 に適用。 医師の判断で高用量が 処方される。 |
※OTC医薬品として(2021年2月現在、第一三共ヘルスケア情報に基づく)
【重要ポイント】配合量と適応
・市販薬のトランシーノに含まれるトラネキサム酸は、 1日あたり最大750mg です。
・一方、美容皮膚科などで医師が処方するトラネキサム酸は、
通常 1日750mg~1,500mg の範囲で調整されることが多く、特に重度の肝斑には高用量が選択される場合があります。
肝斑の症状がなかなか改善しない場合は、市販薬の量では足りていない可能性があるため、一度医療機関に相談してみることをお勧めします。
3. 服用プログラムと併用療法の重要性 ①8週プログラムの重要性
市販薬のトランシーノⅡ/EXは、 高い改善効果が認められる8週間継続服用を推奨 していますが、 安全性の観点から8週間を超えたら一旦中止 するよう定められています。
② 併用療法の重要性
トラネキサム酸は体の中から肝斑を治療する内服薬ですが、効果を最大化するためには、以下の併用が不可欠です。
・徹底的な紫外線対策: 紫外線は肝斑を悪化させる最大の要因です。
日焼け止め、帽子、日傘などで皮膚への刺激を徹底的に避けることが必須です。
・摩擦の回避: 肝斑は摩擦や刺激で悪化します。
洗顔やスキンケアの際、肝斑部分をこすらないよう注意しましょう。
トランシーノは、肝斑に内側からアプローチする強力な選択肢です。
ご自身の肝斑の症状に合わせて、市販薬か医療機関での処方かを選び、適切なケアを継続することが、美肌への近道となります。
4. まとめ:肝斑治療はクリニック処方のトラネキサム酸が優位
| 項目 | 市販薬(トランシーノ) | クリニック・病院処方薬 |
|---|---|---|
| トラネキサム酸量 | 最大 750mg | 750mg ~ 1,500mg |
| 服用期間 | 効果確認後、 安全のため 8週間で 一旦中止 が必要。 |
医師の判断 で 長期継続が可能。 |
| 適応 | 比較的軽度な肝斑、 手軽に始めたい方に。 |
重度な肝斑、 早期かつ確実な効果を 求める方に。 |
なぜクリニック処方が優位なのか
手軽なトランシーノ(市販薬)は、 トラネキサム酸量が750mgまで で、
8週間で中止が必要 です。
一方、慢性的な治療が必要な肝斑には、 最大1,500mgの高用量かつ継続服用が可能なクリニック処方 が推奨されます。
肝斑治療は長期戦ですが、内服の活用と日常のケアの徹底で、確実に改善を目指すことができます。
ご自身の肝斑の状態に合わせて、最適な治療法を選択しましょう。
Q&A
Q1.トラネキサム酸を服用すれば、必ず肝斑は消えますか?
A.トラネキサム酸は、肝斑の原因である「プラスミン」の働きを抑え、メラニンの生成を食い止めることで肝斑を薄くします。
しかし、100%完全に消える保証はありません。
重要なのは、 並行して 紫外線対策 や 摩擦を避けるスキンケア を徹底することです。これらを怠ると、薬を飲んでも肝斑は悪化してしまいます。
Q2.トラネキサム酸は、飲み続けて副作用の心配はありませんか?
A.重大な副作用は稀ですが、いくつかの注意が必要です。
副作用として 食欲不振、吐き気、下痢 などの消化器症状が出ることがあります。
最も注意すべき副作用は、 血栓症(血液が固まりやすくなる)のリスク です。
トラネキサム酸には止血作用があるため、血栓症の既往がある方や、ピルを服用中の方などは、必ず医師に伝えて安全性を確認する必要があります。
Q3.肝斑治療に「トランシーノ」を選ぶメリットと「クリニック処方」を選ぶメリットを教えてください
A.メリットは「手軽さ」と「効果の確実性」の違いにあります。
軽度の肝斑や試してみたい方は市販薬、根深い肝斑や確実な効果を求める方はクリニック処方を選ぶのが賢明です。