「なんだか顔がくすんで見える」「いつの間にかシミが増えてきた」。
鏡を見るたびにそう感じ、美白ケアに励んだり、美容医療を検討したりする方は多いでしょう。
しかし、一言で「シミ」といっても、その正体はひとつではありません。種類を見極めずに治療を始めると、効果が出ないばかりか、かえってシミを悪化させてしまうことさえあります。
シミ治療を成功させるための第一歩は、流行の治療法に飛びつくことではありません。まずは、自分のシミがどのタイプなのかを正しく知ること。
いわば、シミの「顔」を識別することから始まります。
シミは千差万別!主なシミの種類と特徴
私たちの肌に現れる“茶色い斑点”は、その原因や見た目、肌の奥で起きている現象によっていくつかのタイプに分類されます。主なシミの種類を見ていきましょう。
1. 老化の証?「老人性色素斑」
最も一般的なシミが、この老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)です。 「日光性色素斑」とも呼ばれ、紫外線が長年蓄積されることで現れます。
肌の老化とともに現れることが多いため、この名前がついていますが、若い頃から強い紫外線を浴びてきた人は20代、30代でもできることがあります。
見た目の特徴
顔や手の甲、デコルテなど、紫外線が当たりやすい場所にできる、輪郭がはっきりとした茶色い斑点です。大きさは数mmから数cmまでさまざま。
発生メカニズム
紫外線は肌の奥の細胞にダメージを与え、メラノサイト(色素細胞)を活性化させます。すると、メラノサイトは肌を守ろうとメラニン色素を過剰に生成します。
通常、メラニン色素は肌のターンオーバー(新陳代謝)によって排出されますが、加齢や紫外線の影響でターンオーバーが乱れると、メラニンが肌の奥に留まり、シミとして定着してしまうのです。
代表的な治療法
比較的改善しやすいシミであり、 スポットレーザー治療 が有効です。レーザーがメラニン色素にピンポイントで反応し、破壊します。破壊されたメラニンは、かさぶたになって剥がれ落ちることで排出されます。
2. 女性に多い「肝斑」
特に30~50代の女性に多く見られるのが肝斑(かんぱん)です。妊娠やピルの服用、ストレスなど、ホルモンバランスの乱れが原因と考えられています。
見た目の特徴
頬骨に沿って左右対称に、もやっと広がるのが大きな特徴です。目の周りを避けてできることが多く、輪郭がぼやけているため、顔全体がくすんで見える原因にもなります。
発生メカニズム
ホルモンバランスの変化に加え、摩擦や紫外線などの刺激も原因とされています。肌の奥にあるメラノサイトが慢性的な炎症を起こした状態であり、メラニンを過剰に生成し続けることがわかっています。
代表的な治療法
老人性色素斑とは異なり、強いレーザーを当てると炎症が悪化し、かえってシミが濃くなってしまうことがあります。そのため、
メラノサイトを刺激しないよう、 トラネキサム酸などの内服薬や、弱い出力のレーザー(トーニング)、ピーリング などを組み合わせて治療します。
3. ニキビ跡や炎症からくる「炎症後色素沈着」
ニキビや湿疹、やけど、虫刺されなど、肌に炎症が起きた後に色素が沈着してできるのが、炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)です。
見た目の特徴
炎症が起きた部分が茶色や赤黒く変色します。時間とともに薄くなることが多いですが、完全に消えるまでには時間がかかります。
発生メカニズム
肌が炎症を起こすと、自己防衛のためにメラニンを過剰に生成します。そのメラニンが、炎症が治まった後も肌に残ってしまうことでシミとなります。
代表的な治療法
時間とともに自然に薄くなることが多いため、基本的には保湿や紫外線対策を徹底し、肌のターンオーバーを促すケアを行います。
ビタミンCなどの美白成分の導入や、ピーリングも有効です。
レーザー治療を行う場合は、肌に負担をかけすぎないような治療法が選ばれます。
4. 小さな点々が集合した「雀卵斑(そばかす)」
鼻を中心に、頬や目の下などに小さな点々が散らばっているのが 雀卵斑(じゃくらんはん) 、いわゆる「そばかす」です。遺伝的な要因が強く、幼少期から現れることがほとんどです。
見た目の特徴
直径1~4mm程度の小さな斑点が集合して現れます。紫外線を浴びると濃くなる傾向があります。
発生メカニズム
遺伝が主な原因ですが、紫外線によってメラニン色素の生成が促されるため、夏になると濃くなり、冬になると薄くなる傾向があります。
代表的な治療法
紫外線対策が何よりも重要です。美容医療では、光治療(IPL)や、ピンポイントで照射するレーザー治療が有効です。
ただし、遺伝的なものであるため、治療後も紫外線対策を怠ると再発することがあります。
間違った治療は逆効果!なぜ専門家の診断が必要なのか
「同じ“茶色い斑点”なんだから、全部同じように治療すればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、上記のようにシミの種類によって原因も治療法も全く異なります。
例えば、老人色素斑だと思って強いレーザーを当てたものの、実は肝斑も混在していた場合、肝斑の部分は炎症が悪化し、かえってシミが濃くなってしまう可能性があります。
また、ニキビ跡の炎症後色素沈着にレーザーを当てると、肌に刺激を与えすぎて色素沈着がひどくなることも考えられます。
このように、シミの種類を見極めることなく「とりあえず流行っている治療」を受けても、思うような効果が出なかったり、逆効果になったりするリスクがあるのです。
シミは肌の表面だけでなく、奥で何が起きているかまでを正確に診断しなければ、適切な治療法を見つけることはできません。
治療成功のロードマップ
シミを確実に、そして安全に改善したいと考えるなら、まずは専門のクリニックで診断を受けることが、治療成功への最短ルートです。
ステップ1:専門のクリニックを受診する
まずは皮膚科や美容皮膚科を受診し、シミの専門家に見てもらいましょう。
肌の診断機器を使って、肉眼では見えないシミの予備軍や、肝斑の有無なども詳細にチェックできます。
ステップ2:自分のシミのタイプを理解する
診断結果をもとに、自分のシミがどのタイプなのか、何が原因でできたのかを医師から詳しく聞きましょう。複数の種類のシミが混在していることも珍しくありません。
ステップ3:最適な治療法を相談・選択する
診断結果と自分の希望、予算などを踏まえ、医師と相談しながら最適な治療プランを立てます。レーザー、光治療、内服薬、外用薬、ピーリングなど、一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療法を提案してもらいましょう。
シミ治療は、ただシミを消すだけでなく、根本的な原因にアプローチすることが大切です。
闇雲に治療を始める前に、まずは「自分のシミを知る」という第一歩を踏み出してみませんか。
正しい知識と専門家のアドバイスを得ることで、あなたの肌はきっと、より健康的で美しい輝きを取り戻せるはずです。
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