「シミ取りしたのに、かえって濃くなった？ 」
その悩みは「炎症後色素沈着（PIH）」かもしれません。
PIHの原因、自然治癒のメカニズム、そして積極的な対策を正しく知り、不安なく治療を進めるためのガイドです。
色素沈着（PIH）のメカニズム
PIHとは？
レーザーや光治療による「炎症」が原因で、肌の防御反応としてメラニンが過剰に生成されること。
シミの再発とは異なります。
なぜ起こる？
原因は「炎症」 レーザー治療は、肌に意図的に軽い「やけど」を起こしてシミの色素を壊します。
肌の「防衛反応」 肌が炎症（やけど）を治そうとする過程で、メラノサイトが刺激され、肌を守るためにメラニン色素が過剰に作られてしまうのが原因です。
色素沈着を悪化させない「３つの基本対策」
| 対策の柱 | 具体的な行動 | なぜ重要か？ |
|---|---|---|
| 1. 紫外線対策 | ・日焼け止め （低刺激のもの） を毎日塗る ・ 帽子、日傘、マスク で物理的にガードする ・紫外線の強い時間帯の 外出を控える |
紫外線を浴びると、 メラニンが さらに濃く・多く 作られ、消えるまでの時間が 長引くため。 |
| 2. 摩擦の回避 | ・洗顔は泡で優しく洗い こすらない ・タオルはそっと押さえる ・スキンケアやメイク も力を入れず優しく 触れる |
摩擦という「刺激」が 炎症を長引かせ、 メラノサイトを活性化させ、 色素沈着を悪化させる ため。 |
| 3. 保湿 | ・化粧水や乳液で しっかりうるおす ・低刺激・敏感肌用 の保湿剤を選ぶ |
乾燥すると肌のバリア機能が 低下し、ターンオーバー （肌の再生）が乱れます。 その結果、 メラニンの排出が遅れる 。 |
1、徹底した「紫外線対策」
・最重要項目です。 色素沈着が起きている肌は非常にデリケートです。
・紫外線を浴びると、メラニンはさらに濃くなり、消えるまでの時間が長引きます。
・日焼け止め（低刺激のもの）、帽子、日傘、飲む日焼け止めなどで徹底的にガードしてください。
2、絶対に「こすらない」
・洗顔、メイク、タオルで拭く時など、あらゆる「摩擦」が肌を刺激し、色素沈着を悪化させます。
・優しく泡で洗い、そっと水分を押さえるように拭いてください。
3、しっかり「保湿」する
・肌が乾燥するとバリア機能が低下し、ターンオーバーが乱れます。
・保湿をしっかり行うことで、肌の再生を助け、メラニンの排出をスムーズにします。
色素沈着を早く治すための「積極的ケア」
| ケアの 種類 |
主な方法 ・成分 |
期待できる効果 | 補足・注意点 |
|---|---|---|---|
| 外用薬 （塗り薬） |
ハイドロキノン | 新しいメラニンの 生成を強力に抑えます 。 「肌の漂白剤」 とも呼ばれます。 |
医師の処方が必要 。 効果が高い反面、 赤みや刺激が出る ことがある。 紫外線に弱いため、 夜のみ使用 が基本。 |
| 外用薬 （塗り薬） |
トレチノイン （ビタミンA誘導体） |
肌のターンオーバー （新陳代謝）を強力に 促進させます。 古い角質と共に、 溜まっているメラニン色素 を早く外に押し出す 働き があります。 |
医師の処方が必要 。 使用開始時に、 皮むけや赤みが 強く出ることが多い。 |
| 内服薬 （飲み薬） |
ビタミンC （シナールなど） |
メラニン色素の生成を 抑える働きと、 できてしまったメラニン を薄くする働き があります。 肌の回復を助けます。 |
毎日継続して服用することが大切。 |
| 内服薬 （飲み薬） |
トラネキサム酸 （トランサミンなど） |
色素沈着の原因となる 「炎症」 そのものを鎮める 効果 が非常に高いです。 |
肝斑治療にも使われる。 医師の診断のもと処方される。 |
| クリニック治療 | ピコトーニング （ピコレーザー） |
肌にダメージを与えずに 蓄積したメラニン色素だけ を少しずつ破壊 していきます。 |
複数回の施術が必要。 |
【重要】
これらの積極的なケアは、自己判断で行うと肌の状態をかえって悪化させる可能性があります。
特に外用薬や追加のレーザー治療は、 必ず治療を受けたクリニックの医師に相談 し、ご自身の肌の状態に合った方法を提案してもらってください。
シミ取り後の色素沈着の見分け方（自己チェック）
シミ取り後に残る色素沈着には、
主に「炎症後色素沈着（PIH）」と「元のシミの取り残しや再発」
の2種類があり、自分で見分けるための重要なポイントがあります。
| チェック 項目 |
炎症後色素沈着（PIH） の可能性が高い |
元のシミの取り残し /再発の可能性が高い |
|---|---|---|
| 色調・ 濃さ |
元のシミより 一時的に色が濃い （灰色がかった茶色、 紫がかった茶色など）。 境界がややぼやけて 見えることがある。 |
元のシミと同じか、 それより薄い色で残っている （シミの形がそのまま残っている）。 |
| 出現時期 | かさぶたが剥がれた後 （治療後1ヶ月頃）から 徐々に色が濃くなり始める。 |
治療直後、 かさぶたが剥がれた直後の ピンクの皮膚の下に、 すでに色が残って見える。 または数年後に再び現れる。 |
| 濃くなる 場所 |
レーザーを照射した部分全体 に、ぼんやりと色が広がる ように濃くなる。 |
元のシミの輪郭に沿って 色が残っている （特に端の部分）。 |
| 期間によ る 変化 |
適切なケアをすれば、 通常3〜6ヶ月、 長くても1年程度で 徐々に薄くなる 傾向がある。 |
自然にはほとんど 薄くならず、 何ヶ月経っても 同じ濃さで残り続ける ことが多い。 |
| 発生原因 | レーザーの熱刺激に対する 肌の防御反応（炎症） によるメラニンの過剰生成。 |
1回の照射では 取りきれなかった、 あるいは紫外線対策不足 などによる メラニン生成の持続 。 |
特にPIHを見分ける鍵
「濃くなるタイミング」 と 「色の変化」が最大のポイントです。
1、時間差で濃くなる:
・レーザー治療直後はかさぶたが剥がれてキレイに見えるが、その 約1ヶ月後 くらいから色が戻り始め、濃くなったと感じる場合はPIHの可能性が非常に高いです。
2、自然に薄くなる傾向:
・3〜6ヶ月かけて、徐々に色が薄くなる、あるいは薄くなり始めていると感じられるなら、それは肌のターンオーバーによるPIHの自然治癒過程です。
ただし、自己判断は禁物です
このセルフチェックはあくまで目安です。
特に、シミの種類によっては、レーザーの刺激で 潜在的な肝斑（かんぱん）が悪化している 可能性もあります。肝斑に強いレーザーを当てると、PIHのように濃くなることがあり、その場合の対処法（内服薬への切り替えなど）は異なります。
不安な場合は、必ず施術を受けた クリニックや皮膚科医に相談 し、正しい診断と適切なアフターケアの指導を受けるようにしてください。
シミ取り後の色素沈着（PIH）まとめ
・シミ取り後に再び茶色くなるのは「シミの再発」ではなく、「炎症後色素沈着（PIH）」という、治療過程でよく見られる反応です。
・原因は、レーザーの刺激（軽いヤケド）から肌を守ろうとする防衛反応で、メラニンが一時的に過剰に作られるためです。
・通常、肌のターンオーバー（生まれ変わり）と共に、3ヶ月～半年ほどで自然に薄くなっていきます（長い場合でも1年程度）。
もし 半年～1年以上 経っても一向に薄くならない場合や、逆に濃くなっている場合は、色素沈着ではなく「シミの再発」や「肝斑（かんぱん）の併発」など、別の原因も考えられます。
不安なまま自己判断でケアを続けると、かえって悪化することもあります。 必ず治療を受けたクリニックに相談 し、適切な診断と追加治療（ピコトーニング、内服・外用薬の調整など）を受けてください。
よくあるQ＆A
Q１. シミ取りしたら、前よりシミが濃くなった気がします。これは失敗ですか？
A１. いいえ、それは炎症後色素沈着（PIH）」である可能性が非常に高いです。
治療後の正常な反応の一つなので、まずは焦らないことが大切です。
Q２. この色素沈着は、いつになったら消えますか？
A２. 個人差はありますが、通常3ヶ月～半年ほどで、肌のターンオーバー（生まれ変わり）と共に自然に薄くなっていきます。
肌質や体質、ケアの方法によっては1年ほどかかる場合もあります。
Q３. 色素沈着している上から、メイクをしても大丈夫ですか？
A３. はい、メイクをしても大丈夫です。
ただし、メイクをする時も落とす時も、絶対にこすらないように注意してください。
Q４. 半年経っても消えません。どうしたらいいですか？
A４. まずは治療を受けたクリニックに相談してください。
半年～1年経っても薄くならない、または逆に濃くなっている場合、ケアの方法が間違っているか、「肝斑（かんぱん）」の併発など別の原因が隠れている可能性もあります。
医師の診断のもと、ハイドロキノンなどの処方薬や、ピコトーニングなどの追加治療を検討するのが適切です。
Q5. 早く消したいです。市販の美白化粧品を使ってもいいですか？
A5. はい、基本的には問題ありません。
ただし、レーザー後の肌は非常にデリケートです。
「ビタミンC誘導体」や「トラネキサム酸」などが配合された、 低刺激・敏感肌用 のものを選ぶと良いでしょう。
