トラネキサム酸は、症状や治療目的によって適切な 1日量 が異なり、医師の診断に基づいて決定されます。
一般的に、美容皮膚科などで肝斑治療のために処方される際の服用量には、いくつかのパターンが見られます。
美容目的で処方されるトラネキサム酸は、 市販薬の最大量(750mg/日)を上回る量 で処方されることが多く、これが効果の違いに繋がると考えられています。

トラネキサム酸の1日量
| 用量区分 | 服用回数 | 1日量の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 標準的な処方 | 1日3回 | 750mg前後 (250mg×3回) |
市販で購入可能 |
| 高めの処方 | 1日2~3回 | 1000~1500mg/日 | クリニック処方 |
なぜ“クリニック処方”が推奨されるのか
トラネキサム酸は市販薬としてドラッグストアで購入できますが、本格的に肝斑などの治療を行う場合は、クリニックでの処方(医療用医薬品)が強く推奨されます。
これは、単に薬の成分が同じであるというだけでなく、 効果的な用量設定 と 安全性の確保 に大きな違いがあるためです。
| 理由 | 内容 | 補足・根拠 |
|---|---|---|
| 市販薬では 用量足りない |
市販薬(例:トランシーノ ®EX)は 1日500mg (250mg×2回) 。 一方、肝斑の改善に有効 とされるのは 750〜1500mg/日 。 |
医療機関では、肌状態や 体質に応じて適切な用量 を処方できる。 自己判断で市販薬を多く 服用するのは危険。 |
| 副作用リスクの 管理ができる |
トラネキサム酸は血液を 固まりやすくする作用 があり、血栓症リスクの ある人には慎重投与が必要。 |
医師処方では、既往歴・ 服薬状況を確認し、 定期的な副作用チェック (採血など)を行える。 |
| 併用治療を組み 合わせられる |
肝斑治療はトラネキサム酸 単独よりも、ビタミンC・E、 ハイドロキノン、レーザー トーニングなどと併用する ことで相乗効果が出やすい。 |
医師が肌状態を見ながら 総合的に治療計画を 立てられるため、 再発予防や美白維持にも つながる。 |
| 安全に長期服用 できる |
自己判断での長期継続は 副作用リスクが高まる。 市販薬では「2ヶ月以内の 使用」が目安。 |
医療機関では、効果と 副作用のバランスを見ながら 服用期間・維持量を 調整できる。 |
このように、クリニック処方では、トラネキサム酸の 効果を最大限に引き出す量 を服用できるだけでなく、服用中の 安全性を医師が責任をもって管理 することができます。
費用対効果や治療の確実性を考慮 すると、美容目的でトラネキサム酸の服用を検討する場合は、市販薬で様子を見るよりも、 皮膚科や美容皮膚科などの医療機関 を受診することをおすすめします。
服用期間の目安と効果発現
トラネキサム酸は、即効性がある薬ではなく、肌のターンオーバーのサイクルに合わせて、色素沈着の生成を抑えることで効果を発揮します。
そのため、効果を実感するためには 継続的な服用 が非常に重要になります。
| 項目 | 目安 | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 治療 期間の 目安 |
8週間 ~ 12週間(約2~3ヶ月) | 多くの研究で、この期間に有意な改善効果 が確認されています。 まずは3ヶ月を目安に継続が基本。 |
| 効果を 実感し 始める 時期 |
4週間 ~ 8週間(約1~2ヶ月) | 個人差はありますが、肌のくすみ・色ムラ の改善やトーンアップを感じ始めるのは この時期が多いとされています。 |
| 最長 服用 期間 |
医師の指示に 従う (自己判断での 長期継続は×) |
長期服用では副作用(血栓傾向など)の チェックが必要なため、定期的な診察が 推奨されます。 特に市販薬の場合は、 添付文書で定められた 服用期間(例:2ヶ月)を超えての継続はNG とされています。 |
市販薬は短期集中用のため、再発防止や根本改善には、 医療機関での8〜12週間の内服+定期チェック が最も安全で効果的です。
注意事項(必ず確認)
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 血栓症リスク | トラネキサム酸は血を固まりやすくする性質があるため、 血栓症の既往がある方は服用できません。 |
| 妊娠・授乳中の方 | 安全性が確立していないため、 必ず医師に相談を。 |
| ピル服用中の方 | ピルも血栓リスクを高めるため、 併用は要注意。 医師の指導下で行うこと。 |
| 体調変化時の対応 | 服用中に異変を感じたら、 すぐに服用を中止し 医師・薬剤師に相談。 |
まとめ
・一般的な肝斑治療量:1日750〜1500mg(医師処方)
・市販薬:1日500mg(軽度向け)
・服用期間:8〜12週間が目安、効果は1〜2ヶ月で実感し始める
・自己判断での増量・長期服用はNG、医師の管理下で継続が安心
Q&A
Q1. クリニック処方薬と市販薬で、なぜ1日量が違うのですか?
A. 最も大きな理由は、安全性の基準と期待される効果の違いです。
・市販薬(最大750mg/日):
医師の診断なしに、どなたでも購入できるため、安全性を最優先し、最大配合量が厳しく制限されています。
・クリニック処方薬(750mg〜2,000mg/日):
医師が診察し、患者様の症状や体質、既往歴などを把握した上で処方するため、 より高い治療効果を目的とした高用量 (特に肝斑治療で1,500mgなど)での使用が可能です。
Q2. 肝斑治療の場合、市販薬の最大量(750mg/日)でも効果はありますか?
A. 肝斑治療において、市販薬の最大量である750mg/日の服用で効果を実感できるケースは少ないとされています。
美容目的でトラネキサム酸の効果を実感するには、クリニックで処方される 1,000mg~1,500mg/日程度 の量が必要となることが多いです。
Q3. トラネキサム酸は、多ければ多いほど効果がありますか?
A. 一定の範囲内では用量依存的に効果が高まることが期待されますが、闇雲に増やせば良いというものではありません。
トラネキサム酸は、極めて稀ではありますが、血栓症のリスクを高める可能性が指摘されています。
そのため、過剰な服用は副作用のリスクを高める可能性があります。
Q4. 飲み忘れた場合、次の服用時に2回分を飲んでも良いですか?
A. いいえ、絶対に2回分を一度に飲まないでください。
飲み忘れに気づいた時間が次の服用時間に近い場合は、忘れた分は服用せず、通常の時間に 1回分だけ を服用してください。
Q5. トラネキサム酸を長期的に服用しても大丈夫ですか?
A. トラネキサム酸は比較的安全性の高い薬ですが、長期服用については医師の判断が必要です。
特に肝斑治療では、効果の確認や安全性のチェックのために、定期的に医師の診察を受ける必要があります。
📄 添付文書・製品情報(公式)
1.トラネキサム酸錠250mg「日医工」添付文書
日本医薬情報センター(PINS)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055355.pdf
2. トラネキサム酸錠500mg「YD」添付文書
医薬情報QLifePro
https://meds.qlifepro.com/detail/3327002F2050/トラネキサム酸錠500mg「YD」
3. トランシーノ®EX(第一三共ヘルスケア)製品情報/添付文書
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_transino/transino-ex/
4. KEGG 医療用医薬品データベース:トラネキサム酸(Tranexamic acid)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070384
📚 参考文献・研究報告
1.西日本皮膚科雑誌(1985)
「肝斑に対するトラネキサム酸内服療法」
西日本皮膚科, 47(6), 1101–1107.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/47/6/47_6_1101/_article/-char/ja/
2.医書.jp(2007)
「DH-4243(トラネキサム酸配合薬)の肝斑に対する有効性および安全性の検討」
臨床医薬, 23(7), 835–847.
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412101753
3.第一三共ヘルスケア(公式)
「トランシーノ®Ⅱ 臨床試験データ」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_transino/data/data2.html
4.医学書院(2021)
「肝斑治療のエビデンス」総説
https://www.igaku.co.jp/pdf/2030_beauty-02.pdf
5.KEGG OTCデータベース
「トランシーノⅡ(一般用医薬品)効能・用法」
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_otc?japic_code=J1401000024